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病院のブログ

「過敏性腸症候群(IBS)のはなし」
(薬と健康のはなし)

ストレスでお腹が痛くなることはありませんか?

腸の疾患がないにも関わらず、腹痛やおなかの張りを伴うお通じの異常(便秘、下痢など)が続く病気のことを過敏性腸症候群と言います。英語ではIrritable Bowel Syndromeと言うため頭文字をとって「IBS」とも言います。
IBSの人はおよそ10%いると言われており、女性に多く年齢とともに患者数は減ってきます。
原因は分かっていませんがストレスが関与することが明らかになっており、感染性腸炎後に発症しやすいことも分かっています。

IBSの分類

  • 便秘型 ・・・ 硬い便が多い
  • 下痢型 ・・・ 軟らかい便が多い
  • 混合型 ・・・ 硬い便と軟らかい便の両方とも多い
  • 分類不能型 ・・・ 上記3つのどれにも当てはまらない

IBSの診断基準
過去3ヶ月の間で週1日以上腹痛があり、下記の2つ以上の特徴を示す

  1. 排便によって症状が改善する
  2. 症状とともに排便頻度が変わる
  3. 症状とともに便の外観が変わる

★気になる症状がある場合は消化器科を受診しましょう

IBSの治療~薬物治療~

下痢

  • 消化管運動機能調節薬
  • プロバイオティクス(整腸剤)
  • 高分子重合体
  • 5-HT3受容体拮抗薬
  • 下痢止め(症状がある時のみ)
腹痛

  • 消化管運動機能調節薬
  • プロバイオティクス(整腸剤)
  • 高分子重合体
  • 抗コリン薬
便秘

  • 消化管運動機能調節薬
  • プロバイオティクス(整腸剤)
  • 高分子重合体
  • 下剤

消化管運動機能調節薬(トリメブチンマレイン酸塩 ・・・ セレキノン®)

消化管運動が盛んになっている時には抑える働きをし、逆に運動低下時には消化管運動を促す働きをする薬です。
消化管運動に応じて調節する作用があるため下痢、腹痛、便秘すべてに対して効果を示します。

プロバイオティクス(ビオフェルミン®、ラックビー®など)


乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌などを含む整腸剤や食品のことです。腸内細菌のバランスを改善することで下痢、腹痛、便秘などの消化器症状を緩和します。

高分子重合体(ポリカルボフィルカルシウム ・・・ コロネル®、ポリフル®)

腸管内で水分を吸収することで膨らみゲル化する薬で、便の水分量をコントロールする作用があります。

5-HT3受容体拮抗薬(ラモセトロン ・・・ イリボー®)


ストレスがかかるとセロトニンと呼ばれるホルモンが増えます。セロトニンは腸管運動を促す作用のあるホルモンです。そのセロトニンの働きを抑えることで、過剰になった消化管運動を抑えて下痢を改善します。

抗コリン薬(ブチルスコポラミン臭化物 ・・・ ブスコパン®、ブトロピウム臭化物 ・・・ コリオパン®など)


おなかの筋肉が収縮するのを抑えることで、腹痛などの消化器症状を軽減します。
効果の発現は緩やかで口渇、便秘、心悸亢進などの副作用に注意が必要です。

下剤(リナクロチド ・・・ リンゼス®、ルビプロストン ・・・ アミティーザ®など)

便秘が主症状の場合は下剤を用いることもあります。下剤にもいろいろな種類がありますが、刺激性下剤と呼ばれる腸を無理やり動かす薬は毎日飲まず、便秘が酷いときのみ頓服で使います。

IBSの治療~非薬物治療~

食事療法
規則正しく食事を摂り、十分な水分摂取をしましょう。
●食べた方がよいもの●
ヨーグルトなどの発酵食品
●控えた方がよいもの●
脂質、カフェイン、香辛料を多く含む食品など

運動療法
ウォーキング、ヨガなどの適度な運動を行いましょう。
運動をすることでIBSの症状が軽減されることがあります。
 
 
 
心理療法
ストレスマネジメント、認知行動療法など様々な心理療法があります。
これらを行っている専門の医療機関に相談しましょう。
 
 

参考文献:日本消化器学会『機能性消化管疾患診療ガイドライン2020』、今日の治療薬2022、インタビューフォーム