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『人生会議/アドバンス・ケア・プランニング(ACP) をすすめるための支援の基本姿勢』

人生会議/アドバンス・ケア・プランニング(ACP) をすすめるための支援の基本姿勢

複十字病院相談支援センター

当院の理念である『質の高い温かな医療と看護を提供する』ことを実現するためにはご本人が、どのような治療やケアを望んでいるのか、患者さん自身に決めていただくことが重要だと、当センターでは考えております。普段から主治医や看護師、その他当院のスタッフ、あるいはご家族などと、ご自身のお考えについてお話しされていない方もおられると思います。しかし、命の危険が迫った状態になると治療やケアなどについて、自分自身で決めたり自身の望みを人に伝えたりすることができなくなる場合があります。人それぞれの考え方や望むことは、個人の多様な価値観によって異なり、他人が決められるものではありません。そこで、どのような医療やケアを望むかをお一人お一人が事前に考え、ご家族や医療従事者など、周りの人達と話し合ったり伝えたりすることが大切だと、私たち相談員は考えます。
この、‘ご自身の思いを明らかにしたり他者に伝えたりすることを人生会議/アドバンス・ケア・プランニング(ACP)』と呼んで、患者さんご自身が希望する治療やケアを提供できるよう努めるお手伝いを当センターで行っております。
この人生会議は『事前に』という点がとても重要です。人生の最終段階(『現在、行われている治療の効果が低下し、更にそれに追加するべき治療法が無く、現在の治療法を継続しても病気の回復が期待できない』と医師が判断した)の時期に話し合いをすることは、ご本人にとってもご家族や周囲の方々にとっても、精神的にとてもつらく話しにくいことです。では、人生会議はいつやるのか?その時期がいつなのかといえば、それは‘元気な時に’ ’自身の考えを他者に伝えることができるときに‘ということになります。ですから、’病気になった 今、’‘通院・治療中の今‘、といった時期にお話を始めることをお勧めします。人生会議の手始めとして、当院ホームページから『私の思い手帳』を出力し、ご自身のおもいを書きとめてみてはいかがでしょうか。この手帳をもとに、ご自身の思いを他者(ご家族や医療従事者など)に伝えるお手伝いをいたします。

Ⅰ 基本方針

医師や看護師、社会福祉士、またその他の医療・ケアチーム(医師・看護師・薬剤師・社会福祉士・管理栄養士・公認心理士などで構成された、各分野でより専門性の高いチーム)などとの話し合いのもと、患者さんの思いや権利が十分尊重されながら、患者さんが自分らしい生活を送ることができるようお手伝いいたします。
患者さんやご家族の思いは変化するものであって、一度決めたことを変更できないということはありません。気持ちに変化があったらいつでも修正が可能です。このような意思表示ができるための支援も行います。
相談員は人生の最終段階における医療・ケアの方針決定に際し、以下の手続きを念頭に、院内の多職種と連携・協働し、支援いたします。

Ⅱ 人生の最終段階とは

患者さんが適切な治療を受けても回復の見込みがなく、かつ死期が近いと判断された状態の期間(老衰を含めて回復が期待されないと予測される生存期間:数カ月以内・1ヶ月以内・2週間以内・数日など)

Ⅲ 人生の最終段階における医療・ケアのあり方

①医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされ、それに基づいて 医療・ケアを受ける本人が多専門職種の医療・介護従事者から構成される医療・ ケアチームと十分な話し合いを行い、本人による意思決定を基本としたうえで、 人生の最終段階における医療・ケアを進めることが最も大切な原則です。 また、ご本人の意思は変化しうるものであることを踏まえ、ご本人が自らの意思をその都度示し、伝えられるような支援が医療・ケアチームにより行われ、本人と の話し合いが繰り返し行われることが必要です。 さらに、本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性もあることから、家族等の信頼できる者も含めた話し合いが繰り返し行われることが必要です。この話し合いに先立ち、ご本人は特定の家族等を自らの意思を推定する者として前もって定めておくことも大切です。
②人生の最終段階における医療・ケアについて、医療・ケア行為の開始・不開始、 医療・ケア内容の変更、医療・ケア行為の中止等は、医療・ケアチームによって、医学的妥当性と適切性を基に慎重に判断することが必要です。
③医療・ケアチームにより、可能な限り疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、ご本人・ご家族等の精神的・社会的な援助も含めた総合的な医療・ケアを行うことが必要です。
④生命を短縮させる意図をもつ積極的安楽死は、本指針では対象としません。

Ⅳ 人生の最終段階における医療・ケアの方針の決定手続 人生の最終段階における医療・ケアの方針決定手続き

(1)本人の意思の確認ができる場合

① 方針の決定は、ご本人の状態に応じた専門的な医学的検討を経て、医師等の医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされることが必要です。 そのうえで、ご本人と医療・ケアチームとの合意形成に向けた十分な話し合いを踏まえたご本人による意思決定を基本とし、多専門職種から構成される医療・ ケアチームとして方針の決定を行います。
② 時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じてご本人の意思が変化しうるものであることから、医療・ケアチームにより、適切な情報の提供と説明がなされ、本人が自らの意思をその都度示し、伝えることができるような支援が行われることが必要です。この際、ご本人が自らの意思を伝えられない状態になる可能性があることから、ご家族等も含めて話し合いが繰り返し行われることも必要です。
③ このプロセスにおいて話し合った内容はその都度、カルテに記載されます。

(2)本人の意思の確認ができない場合

①ご家族等がご本人の意思を推定できる場合は、その推定意思を尊重しご本人にとっての最善の方針をとることを基本とします。
② ご家族等が本人の意思を推定できない場合は、ご本人にとって何が最善であるかについて、ご本人に代わる者としてご家族等と十分に話し合い、ご本人にとっての最善の方針をとることを基本とします。時間の経過、心身の状態の変化、医学的評価の変更等に応じて、このプロセスを繰り返し行います。
③ ご家族等がいない場合及び、ご家族等が判断を医療・ケアチームに委ねる場合は、ご本人にとっての最善の方針をとることを基本とします。
④ このプロセスにおいて話し合った内容は、その都度、カルテに記載されます。

(3)複数の専門家からなる話し合いの場の設置

上記(1)及び(2)の場合において、方針の決定に際し、
①医療・ケアチームの中で心身の状態等により医療・ケアの内容の決定が困難な場合
②ご本人と医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合の対応
③ご家族等の中で意見がまとまらない場合や、医療・ケアチームとの話し合いの中で、妥当で適切な医療・ケアの内容についての合意が得られない場合等については、安全管理部や倫理委員会などのコンサルテーション部門へ諮ります。また必要であれば、外部の第三者の助言を得られるよう、病院上層部へ働きかけます。

〈引用・参考資料:厚労省〉 
改訂平成30年 3月 版
『人生の最終段階における医療・ケアの 決定プロセスに関するガイドライン』

                        2024年4月25日作成
複十字病院相談支援センター